白内障手術を受けるにあたり制約ってあるの?
―術前検査編―

まだ眼科へ行かれていない方にとって、白内障手術を受けるにあたり、どのような制約があるか気になる方も多いのではないでしょうか?

今回は、そのような不安、悩みにお答えしていきます。

 

まずは眼科にて検査・診察を

「最近、見にくくなってきたなぁ」、「光が眩しいなぁ」、「視界が霞んで見えるなぁ」。

これらは、白内障の方が訴えることの多い症状です。

眼科へ定期受診していない方は、まずは眼科を受診し、それらの原因が白内障かどうかを精査する必要があります。

眼科を受診すると、最新の機器を用いて各種検査を行い、医師の診察にて病状を判断します。

検査は、眼圧検査、屈折検査、視力検査、眼底検査などを行い、白内障手術が決まると、眼軸長検査、角膜形状解析検査など手術に向けた詳しい検査を行います。

どの検査も痛みを伴うものはなく、安心して眼科へお越しくださいね。

 

ただ、1つ注意点があります。

水晶体の濁りの状態や眼の奥を詳しく診るために、検査用の散瞳薬(黒目を大きくする目薬)を点眼する必要があるのですが、薬効が切れる点眼後5-6時間までは、車や自転車の運転ができなくなります。

また、光を眩しく感じたり、ピント調節がしにくくなったりします。

よって、この検査が入る場合は、公共交通機関や徒歩で眼科へ行く必要があります。

眼科に予約の電話をする際に、症状を伝え、車で行って良いか聞いてみると良いでしょう。

 

眼内の状態を詳しく診る眼底検査

眼科へあまり行っていない方にとって、眼底検査は馴染みのない言葉だと思います。

眼底検査は、その名の通り、「眼の底の状態を調べる検査」です。

主に網膜(フィルムに相当)の状態を観察しています。

眼球の断面図をご覧ください。

私たちの目を鏡で見ると、大きく分けて黒目、茶目、白目があります。

黒目の部分は瞳孔と呼ばれ、外界からの光やモノの情報を眼内へ取り入れる通路のような役割をしています。

瞳孔は、眼内へ入る光の量の調節も行います。

光が多い状況下では、瞳孔は小さくなり、眩しさを抑える働きをします。

これを縮瞳と言います。

反対に、光が少ない状況下では、瞳孔は大きくなり、少しでも眼内に多くの光を取り入れて明るく見えるようにします。

これを散瞳と言います。

私たちの瞳孔は、自分の意図することなく、自動的に光量調節をしてくれています。

勘の良い方はもうお気付きかもしれませんが、検査機器の眩しい光を眼にあてると、瞳孔は縮瞳してしまい、眼の中の観察ができなくなってしまいます。

よって、網膜や水晶体の周辺部まで精査しようとすると、光を当てても縮瞳しないように、散瞳薬の点眼が必須となる訳です。

点眼後の制約ができてしまうのは申し訳ないですが、眼の中の状態を精査するためにはとても大事な検査になりますので、ご理解、ご協力をお願いしています。

良い機会なので、モノが見える仕組みについて、もう少し詳しくお話しします。

外界からの光やモノの情報は、眼の表面の角膜から入り、黒目にあたる瞳孔を通過した後、水晶体(レンズに相当)を経て、眼の奥の網膜(フィルムに相当)に投影されます。

網膜に投影された情報は、視神経を経て脳内(後頭葉視覚中枢)へ入り、「見えた!」となるわけです。

左右の眼から入った情報は、脳で処理されて初めて映像として捉えられます。

眼が2つあるのに、モノが1つに見えるのは、脳で視覚情報を処理しているからです。

人間の身体のつくりって凄いですね!

 

コンタクトレンズは装用したままで良いの?

白内障手術を受ける方の大半は、60代以上の方なので、コンタクトレンズを装用している方は少ないです。

しかし、角膜乱視が強い方など、やむを得ない理由でコンタクトレンズを装用している方もいらっしゃいます。

眼鏡が嫌いという方もいらっしゃるでしょう。

眼科で検査を受ける際は、コンタクトレンズを装用して行っても良いでしょうか?

最初の一般検査を受ける際は、コンタクトレンズを装用して眼科へ来られても問題ありませんが、検査を受ける直前に、コンタクトレンズを外してもらう必要があります。

眼鏡をお持ちの方は、眼鏡で来院された方がスムーズに検査を始めることができるのでオススメです。

1回目の検査・診察で白内障と診断され、手術を受けることが決まると、次は、白内障手術に向けた精密検査を受けて頂く必要があります。

精密検査では、白内障手術の際に挿入する眼内レンズの度数を決定する大切な検査がありますので、術後の屈折誤差をなくすためにも、コンタクトレンズ装用を控えて頂く必要があります。

コンタクトレンズ装用中止期間は、施設によって異なりますので、手術を受けられる施設にご確認頂く必要がありますが、ここでは一例を紹介しておきます。

  • ハードコンタクトレンズ:精密(術前)検査日の2週間前から装用中止
  • ソフトコンタクトレンズ(乱視入り):精密(術前)検査日の1週間前から装用中止
  • ソフトコンタクトレンズ:精密(術前)検査日の3日前から装用中止

なぜ、コンタクトレンズを装用中止しないといけないかと言うと、眼の表面にある角膜の形状を本来の状態に戻したいからです。

眼内レンズの度数を決める精密検査では、主に眼軸長(眼の長さ)と角膜屈折力(角膜が光を屈折させる力)を調べています。

コンタクトレンズ装用により、角膜を圧迫された状態が続くと、本来の角膜形状と異なる数値が出てしまう可能性があり、その数値を基に眼内レンズのターゲットパワー(目標屈折値)を決めると、術後屈折誤差を生じてしまう可能性があります。

ハードコンタクトレンズの装用中止期間が最も長いのは、ソフトコンタクトレンズよりハードコンタクトレンズの方が角膜を圧迫する力が強いからです。

これはネーミングからも想像できると思います。

また、角膜乱視の正確な数値を知ることも重要で、乱視矯正眼内レンズ選択の要否、術者によっては手術時の切開位置の調整も行います。

いかがでしたでしょうか?

白内障手術を受けるにあたり制約ってあるの?-術前検査編-でした。

散瞳検査後5-6時間の制約と、コンタクトレンズ装用者の制約があるくらいで、大きな制約はありませんので、安心して眼科へお越しくださいね。

散瞳薬は、散瞳効果が出るまで20-30分程度待つことになりますので、時間に余裕をもってお越しください。

手術に向けた精密検査も、検査項目が多いので時間がかかります。

採血や診察を含めると、2時間くらいかかると思っておいた方が良いでしょう。

次回は、白内障手術を受けるにあたり制約ってあるの?-手術直前編-をお届けします。