これって大丈夫!?白内障術後の愁訴

今回のテーマは、「これって大丈夫!?白内障術後の愁訴」です。

「愁訴」とは、少し聞き慣れない言葉かもしれませんが、「嘆き、訴えること」という意味になります。

白内障手術を終えると、多くの方が「良く見えるようになった」、「色が鮮やかになった」といった満足度の高いご意見を頂くことが多いですが、なかには不満の声が聞かれることも…。

今回は、白内障術後に起こり得る愁訴についてクローズアップしていきます。

 

飛蚊症が気になるようになった

飛蚊症とは、眼内にある「硝子体」というゼリー状の透明な組織に濁りが生じることにより、視界にコバエや蚊のようなものが飛んで見える現象です。

ほとんどが加齢に伴う生理的なものですが、稀に網膜剥離等の眼疾患の前兆であることがあるため、「初めて飛蚊症を感じたとき」や「飛蚊症の数や大きさが変わったとき」は、眼科受診をオススメします。

そんな飛蚊症ですが、「白内障術前は飛蚊症なんて気にならなかったのに、手術が終わってから気になるようになった」とお話されることがあります。

白内障手術では、前眼部(眼内の前方)にある水晶体を超音波で取り除き、人工の眼内レンズを挿入します。

飛蚊症の原因となる硝子体(水晶体より後方に存在)は触っていません。

よって、白内障手術が原因で飛蚊症が増えることはありません。

ところが、「白内障術前は飛蚊症なんて気にならなかったのに、手術が終わってから気になるようになった」という愁訴は、ちらほら聞かれます。

なぜでしょうか。

答えは簡単、「白内障手術によって、濁った水晶体から透明の眼内レンズに変わったことにより、術前から存在していた飛蚊症を認識しやすくなった」ためです。

術前は、飛蚊症があっても、混濁した水晶体越しに景色を見ていたため、飛蚊症を自覚しにくかったのが、白内障手術により透明な眼内レンズに変わることで、細かく小さな飛蚊症まで自覚するようになります。

これは、「良く見えるようになった」ことの裏返しでもあるので、なんとも複雑な愁訴であえるといえるでしょう。

ちなみにこの飛蚊症ですが、治療の必要のない生理的なものである場合、大半は時間の経過と共に気にならなくなっていきます。

数ヶ月経過しても、どうしても気になる方、日常生活に支障が出るような場合は、濁った硝子体を取り除く硝子体手術や、レーザーで飛蚊症の原因となる硝子体混濁を飛ばす方法もあります。

 

目がコロコロする

これは主に、手術直後や翌日にかけてみられることのある愁訴です。

非常に低侵襲な白内障手術ですが、眼内レンズを挿入するための切開創や眼表面における各種器具の刺激により、軽度の炎症を起こし、目がコロコロすると感じることがあります。

これらは、時間の経過と共に改善していくものですので、ご安心ください。

術後に処方される目薬に、炎症を抑えるものが含まれていますので、処方箋通りに点眼を行うことが重要です。

術後、しばらくしてもコロコロ感が治まらない場合は、眼科を受診してください。

目のコロコロ感は、次に紹介するドライアイが原因の場合もあります。

 

目が乾きやすくなった

これは、いわゆるドライアイという症状です。

ドライアイとは、涙の量が不足したり、涙の質のバランスが崩れたりすることで、目の表面に涙が均等にいきわたらなく病気です。

3コンが大きな要因と言われており、「パソコン」「コンタクトレンズ」「エアコン」はドライアイの大敵とされています。

日本では、2000万人以上の方がドライアイを罹患しているとされ、ドライアイはとても身近な目の病気です。

そんなドライアイですが、白内障手術により悪化することはあるのでしょうか。

もともとドライアイを罹患している方が白内障手術を受けると、ドライアイの症状が一時的に悪化することがあります。

これは、白内障手術により、目の表面の角膜に切開創を作ったり、刺激が加わったりすることによるとされています。

また、手術の際、消毒のために目の表面をしっかり洗いますが、そのことが原因でドライアイを生じることもあります。

手術時の目の消毒は、感染症を防ぐためにとても重要です。

高齢の方のまぶたは炎症を起こしやすく、このことが白内障術後のドライアイ症状を引き起こすこともしばしばあります。

万が一、このような症状が出た場合は、担当医と相談し適切なドライアイ治療を受けることで落ち着いてくることが多いです。

 

ぼやけてハッキリ見えない

これは、手術直後に患者様が不安な面持ちでお話されることがあります。

まず、手術が終わってすぐは、目薬が効いている状態ということや、手術に伴う刺激により、ぼやけて見えることが多いです。

これは一過性のものですので、ご安心ください。

特に、各種目薬が起因とするものに関しては、手術を終え、5-6時間すると落ち着いてくることが多いです。

白内障手術では、水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入するための切開創を目の表面の角膜に作ります。

この切開創は、僅か数ミリの非常に小さなものですが、切開創が閉じるまでの期間は僅かな乱視成分として残ります。

また、非常に低侵襲な白内障手術ですが、眼表面における各種器具の刺激により、術後、見え方が安定するまで、少し時間がかかる場合があります。

これらも、時間の経過と共にスッキリ見えるようになっていきますので、ご安心ください。

上記は、ぼやけて見える原因が、眼表面の炎症を起因とするものですが、その他、以下のようなケースでも術後のぼやけを自覚する場合があります。

 

1つ目は、術後に残余乱視が残った場合です。

白内障手術では、眼内レンズの焦点をどの距離に合わすかどうか、患者様と相談しターゲットを決めます。

狙い通りのターゲットになっても、残余乱視が残ってしまうと、ぼやけてハッキリ見えないと感じることがあります。

術後、しばらく経ってもぼやけが治らず、種々の検査により残余乱視が原因だと判断された場合、以前、このサイトでご紹介したタッチアップ等の方法で残余乱視を軽減することができます。

 

タッチアップってなに?

 

また、LRI(乱視矯正角膜輪部切開術)という角膜を切開する方法で角膜乱視を軽減することもできます。

適応については、担当医とご相談ください。

2つ目は、左右眼に度数差をつけて手術を行った場合です。

いわゆる「モノビジョン法」による白内障手術です。

この「モノビジョン法」は、保険適応の単焦点眼内レンズで、できる限り眼鏡の依存度を減らす優れたものですが、左右差に脳が慣れるまでに時間を要することがあります。

比較的若い方や左右の度数差を大きくした場合、術後なかなか慣れない場合があります。

モノビジョン法は、どちらかといえば、高齢者向けの方法です。

手術の際は、担当医と良く話し合ってから選択するようにしましょう。

長い方ですと、慣れるまでに半年くらいかかる場合があります。

どうしても慣れない場合、眼内レンズを入れ替えることもあります。

 

視界の端の方に光?レンズの端?が見える

これはごく稀ですが、白内障手術後の患者様が訴える症状の1つです。

一般的な眼内レンズは、レンズ直径が約6mmで、支持部を含めると約13mmになります。

「視界の端に光が見える」という症状は、レンズ本体の端で光が乱反射しそれを自覚していることが考えられます。

時間の経過と共に気にならなくなってくる方が多いですが、数ヶ月経っても気になるという方は担当医に相談してみると良いでしょう。

 

まとめ

今回は、白内障術後にみられる愁訴についてご紹介しました。

術後数日間は、経過観察のために続けて診察を受けて頂くことになりますので、気になることがあれば、遠慮せず担当医に相談しましょう。