手術の流れは?

現在の白内障手術の主流である超音波を用いた白内障手術について解説していきます。

 

手術時間・日程は?

超音波を用いた白内障手術は、片眼10分程度で終了します。

手術室へ入る前に、抗菌の目薬、散瞳の目薬、麻酔の目薬などを点眼する必要があるため、手術開始の1時間以上前に手術を受ける施設へ行く必要があります。

 

また、白内障手術に関しては、多くの施設で日帰り手術が可能となっています。

それぞれの眼の状態や生活環境にもよりますが、両眼同日日帰り手術も可能です。

ご高齢の方ですと、通院するのも大変だと思いますので、手術が1度で済むメリットは大きいでしょう。

 

日帰り手術も良いけど「家が遠いので術後の通院が面倒」、「入院している方が安心」という方には、施設によっては提携先病院に入院可能な場合があります。

事前に確認しておきましょう。

 

手術後の生活に制限はあるの?

手術後の通院スケジュール、生活制限については施設により方針が異なります。

詳しくは手術を受けられる施設にご確認ください。

ここでは一例をご紹介します。

術後比較的早期からできること 術後しばらく制約のかかること
日常生活 一般的な家事・髭剃りなど 洗顔・洗髪・化粧など
入浴は首下シャワーなどの制限
仕事 事務作業など 力仕事・畑仕事など
趣味 TV鑑賞・軽い散歩など 激しい運動・車の運転など

 

手術後に注意すべきこと

眼帯で眼を保護する

術後の感染予防対策に眼帯は必須です。

両眼同日で手術を受けた場合は、ゴーグルタイプの眼鏡を使用します。

使用期間は施設の指示に従ってください。

 

手術した眼をこすらないようにする

眼をこすることで、手を介して細菌感染を起こす可能性があります。

特に無意識に眼を触る可能性がある就寝時は注意が必要です。

そのため、術後しばらくは就寝時も眼帯で眼を保護する必要があります。

 

見え方が安定するまで時間がかかることがある

個人差がありますが、見え方が安定するまで時間がかかることがあります。

術後1週間程度で安定するケースが多いようです。

その他、下記のような症状が出る場合があります。

 

1. 光が眩しい

白内障手術により、濁った水晶体が取り除かれ、クリアな眼内レンズが入ることで眼内に入る光が増え、眩しさを感じることがあります。

多くは時間の経過と共に慣れていきますが、なかなか慣れない場合は遮光眼鏡等を装用すると眩しさは軽減するでしょう。

 

2. 景色が青っぽく感じる

これは、白内障があった頃は水晶体が混濁していたことにより、波長の短い青色の光が吸収され、眼内に届きにくい状態でした。

白内障手術を行い、人工のクリアな眼内レンズが入ることで、今まで通しにくくなっていた青色光が眼内へ入ることで生じる現象です。

これも時間の経過と共に慣れてくるケースが多いです。

これらの対策を施した着色眼内レンズも存在します。

 

3. 夜間のグレア・ハロー

グレアとは「光が長く伸びたように見える現象」、ハローとは「光の周辺に輪がかかって見える現象」を言います。

これは、眼内レンズに光が反射して散乱するために生じる現象で、プレミアム眼内レンズと言われる多焦点眼内レンズで特に起こりやすい現象です。

夜間の運転時に生じることが多く、慣れない場合は、夜間運転対応の遮光眼鏡を装用すると良いでしょう。

 

4. 視界に黒いものが飛んで見える

「視界に黒いものが飛んで見える」、「蚊のようなものが動く」。

これらは飛蚊症の症状です。

飛蚊症は、眼の中にある硝子体というゼリー状の透明な液体の中に濁りが生じることで自覚します。

白内障手術で飛蚊症が生じるのではありません。

白内障があった頃はレンズが濁っていたことにより、飛蚊症があっても感じにくかったのが、術後、レンズがクリアになることで自覚するようになります。

これも次第に慣れてくることが多いですが、飛蚊症の数が増えてきた場合は、早めの眼科受診をオススメします。

飛蚊症の多くは生理的なものですが、稀に網膜剥離等の病気の前兆のことがあり、注意が必要です。

 

すぐには入浴できない

手術当日はもちろんのこと、術後3-4日間は入浴禁止にしている施設が多いようです。

手術翌日以降は、首下シャワーを可としている施設もあり、その場合は、顔に水がかからないよう細心の注意を払うようにしてください。

汗が眼に入るのも良くないので、くれぐれも長湯はしないように!

 

職場復帰はいつからできるか

職場復帰については、デスクワーク程度の作業であれば、術翌日から可能です。

しかし、術後診察へはしばらく通う必要があるため、眼科を受診する必要があります。

術後の通院スケジュールも予め確認しておくと良いでしょう。

力仕事や屋外での仕事は、術後1週間程度は控えた方が良いでしょう。

 

運転はいつからできるか

術後、見え方が安定するまでには個人差があり、実際に視力がどれくらい出てきたかをみながら、医師が判断を行います。

術後1週間程度で視力が安定してくるケースが多いようです。

医師の指示に従って、運転を開始してください。

 

なぜ手術後に目薬を点眼しないといけないの?

手術後の感染予防や消炎のため、目薬をしっかり点眼する必要があります。

白内障手術後に処方される目薬の種類は主に3種類です。

 

  • 抗菌薬

細菌感染予防として処方します。

  • ステロイド薬

手術後の炎症に伴う充血や腫れを抑えるために処方します。

  • 非ステロイド性抗炎症薬

手術後の痛みや不快感の抑制を目的に処方します。

術後合併症の1つである嚢胞様黄斑浮腫の予防としても用いられます。

 

白内障手術の合併症は?

白内障手術の進歩は目を見張るものがあり、傷口も数ミリと小さく、非常に安全な手術となっています。

日本では年間100万件以上の白内障手術が行われています。

とても安全な手術ですが、ごく稀に術後合併症が生じるケースがあります。

 

細菌性眼内炎

なんらかの原因で眼内に細菌が侵入することで発症します。

細菌が原因ではない無菌性の眼内炎もあります。

術後1週間以内に発症するケースが多いですが、1ヶ月以降に発症するケースもあります。

発症頻度は0.05%と非常に稀ですが、重篤になると非常に厄介な合併症のため、注意が必要です。

術直後は鮮明に見えていたのに、急に見にくくなり、充血や痛みを伴う場合は眼内炎が生じている可能性があります。

すぐに手術を受けた施設を受診してください。

 

後発白内障

白内障の手術後、数ヶ月~数年経った頃に視力低下やかすみ、眩しさが再発し、また白内障になったのかな?と感じることがあります。

これを後発白内障と言います。

手術の際、水晶体が入っている袋(後嚢)を残しておくのですが、その後嚢が混濁することで生じます。

後発白内障はレーザーを使って簡単に取り除くことができます。

5分程度で済む処置であり、視力はすぐに回復します。

発症頻度は、術後1年で10%程度、3年で20%程度、5年で30%程度と言われています。

 

嚢胞様黄斑浮腫

黄斑部という網膜の中心部にむくみが生じる合併症です。

発症頻度は極めて少なく、万が一、発症した際は点眼等の治療を行います。