今回のテーマは、「正確な術前検査は満足度の高い白内障手術に繋がる-眼底検査編 Part1-」です。
眼底検査とは、文字通り“眼の底の検査”であり、主にフィルムに相当する網膜や視神経の状態をみています。
白内障術前検査における眼底検査では、“見にくくなった”原因が、単に白内障だけなのか、そのほか病気が隠れていないのかを確認します。
具体的には、視力の要となる網膜の中心部に病変が生じる加齢黄斑変性症、視神経が圧迫されることで生じる緑内障があります。
せっかく白内障手術を行って水晶体の濁りが取れても、網膜や視神経に病気があり、術後も見にくさが改善しなければ、患者様が不満に感じてしまうこともあるでしょう。
また、多焦点眼内レンズの適応判断について、眼底疾患の有無が関わってきます。
よって、満足度の高い白内障手術を行う上で、眼底検査も欠かすことはできません。
では、眼底検査にはどのような種類があるのでしょうか?
Part1では、代表的な眼底検査をご紹介していきます。
OCT(光干渉断層計)
OCTでは、光の干渉現象の原理を利用し、網膜の断層像を撮影しています。
主に、網膜に異常が生じていないかを確認します。
次項で紹介する眼底写真は2次元像ですが、OCTは3次元像で観察することが可能です。
OCTの歴史は、大きく分けてタイムドメインOCTとフーリエドメインOCTに分類されます。
タイムドメインOCTは、TD-OCTと称され、最初に実用化された元祖OCTです。
現代のOCTと比較すると、画像の精細さに劣りますが、はじめて眼底の断層画像化に成功した革命的な機器と言えるでしょう。
TD-OCT(カールツァイスメディテック株式会社様ご提供)
次に登場したのがフーリエドメインOCTです。
フーリエドメインOCTは、SD-OCT(スペクトラルドメインOCT)、SS-OCT(スウェプトソースOCT)に分類されます。
SD-OCT(カールツァイスメディテック株式会社様ご提供)
SS-OCT(株式会社トプコン様ご提供)
画像ではSS-OCTのみ配色が異なっていますが、機種によって配色の変更が可能です。
よって、SD-OCTを白黒表示させたり、SS-OCTをカラー表示させたりすることが可能です。
フーリエドメインOCTの出現により、断層画像化のパフォーマンスが圧倒的になり、高精細な網膜断層像が得られるようになりました。
眼科診断の進歩は、OCTの進歩といって過言ではないほど、眼科において重要な機器になっています。
眼底カメラ
外国人から見た日本人のイメージの1つに、「首からカメラをぶら下げている人」があるようです。
最近はコンパクトなデジカメやスマホカメラで撮影する人が増えているので、一昔前の話かもしれませんが、昔からある「フラッシュをたいて撮影するカメラ」ってありますよね?
眼底カメラも、一般的なカメラのようにフラッシュをたいて眼底を明るく照らし、撮影します。
昔ながらの眼底カメラは、撮影後、フィルムにプリントアウトする必要がありましたが、現代の眼底カメラは、デジタル化が進み、電子カルテへダイレクトに画像送信することが可能になりました。
最新の眼底カメラでは、2次元ながらより広範囲の眼底の状態(主に網膜)を観察しています。
眼底カメラの進化は、1回の撮影で描写できる眼底の範囲が広くなったこと、解像度が上がることで、眼底のより詳細な観察が可能になったことが挙げられます。
(カールツァイスメディテック株式会社様ご提供)
上の画像では、中心のあたりに45°と記されている白い円がありますが、これが従来型眼底カメラの撮影範囲でした。
これと比較し、最新鋭の眼底カメラでは、圧倒的に広い範囲を撮影できていることがお分かり頂けると思います。
網膜最周辺部まで測定が可能になっています。
また、撮影した後、見たい部位を拡大表示することもできます。
網膜上にある微細な病変を拡大表示させることも可能です。
まとめ
日常の眼科診療で用いられる代表的な眼底検査を2つご紹介しました。
デジタルデバイスの進化は、眼科機器において革命的進化を遂げています。
次回、Part2では、白内障手術で眼底検査が必要なワケを詳しく解説していきます。