今回のテーマは「白内障手術にこんな方法があったんだ!-ミックス&マッチとは-」です。
多焦点眼内レンズに興味があり、ネットで情報を調べている方は聞いたことがあるワードかもしれません。
今回は、ミックス&マッチについて解説していきます。
ミックス&マッチとは⁉
日進月歩の進化を遂げる、多焦点眼内レンズ。
当初は遠方と近方の2か所を見るための2焦点レンズが主流でしたが、現在では中距離を含めた3焦点や5焦点、焦点を連続して自然に見ることができる焦点深度拡張型レンズなど、世界の眼内レンズ製造メーカーの開発ラッシュが続いています。
多焦点眼内レンズそれぞれに長所があれば短所もあります。
例えば、
Aという多焦点眼内レンズは、遠方はよく見えるけど、近方が弱い傾向にある。
Bという多焦点眼内レンズは、デスクワークなどの近方には強いけど、夜間の運転でハロー・グレア(光のぎらつき)を生じやすい。
などといった具合です。
この場合、本やスマホはたまにしか見ないし、手元用眼鏡をかけても良いから、とにかく遠くが裸眼でよく見えて、夜間の車の運転もしたい!という方はAを選ぶでしょう。
逆に、車の運転はしないし、手元も裸眼でしっかり見えて欲しい!という方はBを選ぶでしょう。
このように、多焦点眼内レンズのスペックと患者のニーズがマッチすれば、比較的簡単に答えは出ますが、「車の運転もするがデスクワークもしている」や「術後は極力眼鏡をかけたくない」という声も聞かれます。
そんなときに使えるテクニックの1つが、ミックス&マッチです。
人間の目は、2つありますよね。
白内障の進行は、左右差がある場合もありますが、極端な差がない限り、白内障手術を受けるとなれば両眼の手術を選択されるケースは多いです。
そこから保険適応の単焦点眼内レンズにするか、選定療養もしくは自由診療の多焦点眼内レンズにするかを決めていきます。
単焦点眼内レンズでは、あえて左右眼の度数差をつけるモノビジョン法を選択することはありますが、眼内レンズの種類(製品)は左右同じになることが多いです。
多焦点眼内レンズを選んだ場合、患者ニーズに合わせて、左右眼にあえて特性の違う多焦点眼内レンズを入れることがあり、これをミックス&マッチと呼んでいます。
先程の例でいえば、片眼にAという多焦点眼内レンズ、もう片方の眼にBという多焦点眼内レンズを挿入します。
左右で異なる眼内レンズを入れて見え方どうなるの?と心配する声も聞かれそうですが、人間の脳は適応能力が高いですので、術後満足されている方が多いです。
ミックス&マッチに限らず多焦点眼内レンズでは、慣れるまでに少し時間がかかる方はいます。
どうやってレンズの種類を決めるの?
それぞれの多焦点眼内レンズの特性を理解した医師が患者と相談して決定します。
多焦点眼内レンズの種類や構造により、遠方は抜群に見えるけどどうしても手元の見え方が劣るレンズや、手元は近くまで寄せても見えるけど、光を見るとハロー・グレアが生じるレンズなど、長所があれば必ず短所も存在します。
これと患者のニーズを照らし合わせて考えていきます。
左右眼で異なるレンズを挿入する場合、どちらの眼を遠く重視にするか、近く重視にするかを決める必要があります。
これは、過去にもご紹介している優位眼が深く関わってきます。
正確な術前検査は満足度の高い白内障手術に繋がる ―優位眼検査編―
基本的には、優位眼を遠方に合わせ、非優位眼を近方に合わせることが多くなります。
単焦点×多焦点のミックス&マッチもあり
また、片眼に保険適応の単焦点眼内レンズ、もう片方の眼に多焦点眼内レンズを選ぶ方法もあります。
これのメリットとしては、1つは金額面です。
両眼に多焦点眼内レンズを入れると、結構な金額になりますが、片眼を保険適応の単焦点眼内レンズにすることで、費用負担を抑えることができます。
もう1つは、あえて片眼を単焦点眼内レンズにすることにより、単焦点眼内レンズのメリットでもあるコントラスト向上が期待できます。
最近の多焦点眼内レンズは、コントラスト感度が向上したモデルも出ていますが、単焦点眼内レンズの焦点位置での見え方を比べると、単焦点眼内レンズの方がよりハッキリ鮮明に見えることが多いです。
これらの理由から、車の運転に特化したいというニーズに対し、優位眼に遠方にバッチリピントを合わせた単焦点眼内レンズを挿入し、非優位眼に多焦点眼内レンズを入れるという方法もあります。
まとめ
左右眼であえて異なった特性をもつ多焦点眼内レンズを挿入するミックス&マッチ法。
白内障手術の選択肢の1つとして知っておかれると良いと思います。