正確な術前検査は満足度の高い白内障手術に繋がる ―角膜形状解析検査編―

今回のテーマは、「正確な術前検査は満足度の高い白内障手術に繋がる ―角膜形状解析検査編―」です。

角膜といえば、眼の表面にある透明な組織ですが、白内障手術と何が関係あるの?と疑問を持たれた方もいるでしょう。

でも実は、精度の高い白内障手術を行う上で、欠かすことのできない重要な検査の1つです。

今回は、角膜形状解析検査にフォーカスを当てていきます。

 

角膜形状解析検査とは?

角膜形状解析検査とは、簡単に言えば、眼の表面にある角膜という透明な組織が、どのような形状をしているのかを詳しく調べる検査です。

専門用語でトポグラフィーと言い、主に角膜乱視の詳細を把握するために検査します。

 

もう1つ、角膜の状態を測定する検査に、ケラトメーターがあります。

ケラトメーターは、レフラクトメーター(眼の度数を測定する検査)とセットになっていることが多く、眼科や眼鏡屋へ行くと最初に測定することが多い検査です。

器械を覗いて、「気球」を見る検査と言えば、「あれね!」と思い出した方も多いはずです。

 

ケラトメーターでも角膜乱視の状態は分かるのですが、トポグラフィーは角膜のより広い範囲を測定します。

機種によって差はありますが、ケラトメーターでの角膜測定範囲は中心から約3ミリ程度ですが、トポグラフィーでは8ミリ以上の範囲を測定します。

 

一般的な角膜形状とは?

もしも、角膜の形状が完全な正円であれば、理論上、角膜乱視はゼロということになりますが、乱視がゼロという方はむしろ稀です。

一般的な角膜の水平方向の直径は約12ミリ、垂直方向の直径は約11ミリです。

つまり、正円ではなく、やや楕円になっていることが多いです。

例えるなら、ラグビーボールのような形状です。

若い頃は、垂直方向の光を曲げる力が強い直乱視(横向きラグビーボール)の人が多いのですが、角膜の解剖学的数値から考えても相関性があります。

 

乱視は、角膜乱視だけではなく、水晶体乱視も存在します。

一般的には、角膜乱視を相殺する方向を軸に水晶体乱視が存在することが多く、角膜乱視の影響が少なくなるようになっています。

 

しかし、加齢とともに水晶体乱視が増えたり、角膜乱視の形状に変化が出たりして、倒乱視(水平方向の光を曲げる力が強い)の人も増えてきます。

斜め方向の光を曲げる力が強い斜乱視の人もいます。

また、生来乱視が強い人、眼疾患に伴った乱視がある人も存在します。

 

白内障手術で角膜形状解析が必要なワケ
  • 術後乱視を予測

白内障手術をすると、水晶体を人工の眼内レンズに置換します。

眼内レンズに置換することで、水晶体乱視の影響が除外され、角膜乱視が顕性化します。

つまり、角膜形状解析検査で得られた角膜乱視のデータが、術後乱視の目安になります。

 

  • トーリック(乱視矯正)眼内レンズ使用の判断

角膜乱視の度数が強い場合、通常の(単焦点)眼内レンズを挿入すると、角膜乱視が顕性化することで焦点がぼけてしまい、せっかく白内障手術をしても見え方が不鮮明になってしまうことがあります。

そのような場合は、トーリック眼内レンズを選択することで、角膜乱視を矯正することが可能です。

 

少し専門的な話になりますが、少量の乱視は、明視域(焦点の合う距離)を広くするという点において、有利に働きます。

通常の眼内レンズにピント調節機能はありませんので、あえて乱視を残すことで明視域が広がり、ピントが合う範囲を広めることができます。

多少の乱視が残っていても、私たちの脳の処理能力で「鮮明に見えている」と感じることができます。

 

プレミアム眼内レンズと言われる多焦点眼内レンズは、老視矯正レンズとも呼ばれ、遠くも近くも見える眼内レンズです。

このレンズを選択する場合は、眼内レンズ自体に明視域を広く保つ機能が搭載されているので、乱視による明視域拡大効果を狙う必要がなく、乱視矯正をしっかり行う場合が多くなります。

 

  • 円錐角膜などの特殊な乱視の検出

円錐角膜とは、角膜の一部が菲薄化し、円錐状に異常な突出をする角膜疾患です。

断面で見ると、正常な角膜はなだらかなカーブを描きますが、円錐角膜では、角膜の一部が険しい山のように前方突出しています。

眼鏡やソフトコンタクトレンズでも矯正が困難な不正乱視の代表格です。

円錐角膜をはじめとする不正乱視ですが、トポグラフィーで角膜形状解析を行うと一目で判別可能です。

上の画像で、角膜中心のやや下方が赤くなっていますが、そこが円錐状に突出している部分です。

 

このような眼に白内障手術を行っても、角膜不正乱視成分を排除することはできないので、術後、裸眼では満足な視力が出ない可能性を推測できます。

不正乱視は、トーリック眼内レンズを挿入しても矯正が困難です。

 

とはいえ白内障手術により、水晶体混濁が起因となる見にくさ、眩しさ等の愁訴を改善できますので、白内障が進行している眼には、不正乱視があっても白内障手術が行われます。

 

トポグラフィーを測定することにより、患者様それぞれの眼に対する術後の経過予測が可能になるのです。

 

まとめ

角膜形状解析検査は、白内障手術後の乱視の影響を知る上で、重要な情報源になります。

せっかく、クリアな眼内レンズを挿入しても、角膜乱視の影響が残って見え方がぼやけてしまっては、患者様の満足度が下がってしまいます。

満足度の高い白内障手術を行う為には、正確な角膜形状解析検査が必然と言えるでしょう。