今回のテーマは「なぜ多焦点眼内レンズはハロー・グレアが生じるのか?」です。
ハロー・グレアに関しては、過去の記事で詳しく解説しています。
ハローとは、光の周囲に輪がかかっているように見える現象、グレアとは、光源を見た時に光がギラついて眩しく感じる現象です。
どちらも、多焦点眼内レンズ挿入眼に感じやすいと言われています。
なぜ、多焦点眼内レンズにハロー・グレアが生じやすいのでしょうか?
核心に入る前に、まずは、多焦点眼内レンズの構造からみていきましょう。
多焦点眼内レンズの構造
多焦点眼内レンズは、大きく分けて①回折型、②屈折型、③焦点深度拡張型に分けられます。
回析型の多焦点眼内レンズは、レンズの同心円上にノコギリ状の段差を持たせ、光を遠方と近方(3焦点なら中間も)に振り分けた構造になっています。
屈折型の多焦点眼内レンズは、レンズに遠方用のゾーン、近方用のゾーンを設け、遠近どちらも焦点を結ぶように設計された構造になっています。
焦点深度拡張型(以下EDOF)は、光を振り分けることなく見える範囲を広げる(拡張する)構造になっています。
ハロー・グレアを生じる要因は?
EDOFの多焦点眼内レンズは、ハロー・グレアを生じにくいと言われています。
他のタイプの多焦点眼内レンズとは、何が違うのでしょうか?
EDOFのなかでも、ハロー・グレアが非常に少ないと言われているSIFI Med Tech社・MINI WELL READYを例に解説していきます。
MINI WELL READYのレンズ構造は、回折リング、ステップ、屈折ステップがないために、ハロー・グレアが非常に出にくい構造になります。
上の図は、MINI WELL READYのレンズ構造です。
回折リングやステップがなく、レンズ断面を見ても段差が少ないことが分かります。
右の図は、従来の回折型多焦点眼内レンズの構造です。
レンズ断面を見ると、ノコギリ状に段差があることが分かります。
この段差により、ハロー・グレアを生じやすくなります。
レンズ断面を比べると、一目瞭然ですね。
ちなみに、MINI WELL READYは、球面収差の原理を用いて、焦点深度を拡張させることで、連続的な焦点を実現しています。
上図のように、オプティカルゾーンは3ゾーンに分割されています。
中央とその周辺のゾーンに異なる球面収差をもたせ、最周辺ゾーンは単焦点となっています。
これらの特殊な構造により、焦点深度を拡張し、多焦点眼内レンズとしての機能を持たせています。
回折型の多焦点眼内レンズでも、製品によっては、回折格子の先端を滑らかにすることで、ハロー・グレアを軽減させているものもあります。
夜間運転時の大敵となるハロー・グレアについて、眼内レンズメーカー各社は対策品の開発を進めているようです。
まとめ
今回は、「なぜ多焦点眼内レンズはハロー・グレアが生じるのか?」について、解説しました。
多焦点眼内レンズの回折リングやステップ、屈折ステップがレンズ表面にあることにより、ハロー・グレアが生じやすくなります。
焦点深度拡張型の多焦点眼内レンズは、回折リングやステップ等がないため、ハロー・グレアを生じにくくなります。
従来の回折型多焦点眼内レンズでも、回折格子の先端を滑らかにすることで、ハロー・グレアを軽減させているモデルもあります。
多焦点眼内レンズを選択しようとされている方で、夜間運転が多い場合は、ハロー・グレアが軽減されるレンズを選択されることをオススメします。